クムギとイチは、デスカラス班で行動を共にする記録係と魔男です。街で一緒に買い物をし、仲間として相手を頼る関係。親しさは伝わってきますが、買い物への同行や記録係を巡る返答だけで、恋人や両想いとまでは断定できません。
私がこの二人に惹かれるのは、クムギが自分の希望を言い、イチがそれに応じるところ。イチが彼女の居場所を一方的に決める形には収まりません。その距離が好きです。
クムギとイチの関係は記録する仕事から始まる
クムギは魔女及び魔法研究学部、通称・魔女研のメンバーで、シラベドンナを師匠に持つ魔女候補生。イチの行動を記録する役目を与えられ、デスカラス班に所属しています。
この仕事から始まる関係が面白いと感じます。クムギは、周囲が驚くイチの活躍だけに出会う人ではありません。行動を追い、仲間と動き、その間に起きた出来事を残す人です。派手な場面の前後まで付き合います。その積み重ねが、二人の会話にある親しさを作っているのでしょう。
第47話では、クムギ自身の記録する仕事への愛着も描かれます。最初に与えられた役目を、続けたいと思うようになります。イチの行動をただ書き写しているだけなら、ここまで仕事が本人の気持ちへ食い込むことはなかったはずです。
私は、誰かの行動を知る仕事をするクムギが、イチからは自分の気持ちを尋ねられるところが好きです。相手を観測する側だった彼女自身へ、問いが戻ってきます。この往復に、二人でいる意味が見えます。
街の買い物を恋愛の証拠にしてよいのか
第44話「おくりもの」では、イチとクムギが街へ買い物に出かけます。魔法狩りの最中とは違う、二人の日常を見られる時間です。
二人で街へ行くという配置は、たしかにデートのようにも映ります。分かる、そう見たくなる(笑)。ただ、買い物への同行という事実だけでは、本人たちが恋愛のつもりだったかは分かりません。
それでも、一緒にいる理由が危険な任務だけに限られないところは嬉しいです。戦うために同じ場所へ行く関係には、役割上の必要があります。買い物は、同じ相手と日常の時間も過ごすという別の一面を見せてくれます。ここに親しさを感じること自体は、恋人と断定することとは別でしょう。
パーティーで重なる二人の選択
第46話では、スピカがクムギに代わって記録係になろうとします。そのときイチは、クムギ本人がどうしたいのかを問いかけます。第47話では、クムギも記録係を続けたい気持ちを表します。
このやり取りを、イチがクムギを選んで救った、という一言で終わらせるのは惜しいです。クムギが自分の希望を表に出すことと、イチが誰と行動したいかを答えること。二つの選択が重なっているから、あの場に居場所が残るのだと思います。
イチが一方的に決めるだけなら、クムギは誰かに決めてもらう立場のままです。逆に、彼女が希望を話しても相手の返答がなければ、その仕事を続けられるとは限りません。自分から望むことと、相手から必要とされることが、両方あります。ここにぐっときます。
イチが魔男だからクムギの気持ちを決められるわけではありません。強い側がその場を解決するだけなら、クムギ自身がどうしたいかは置き去りになります。彼が問いを返したことで、彼女の返事が必要な会話になります。そこが好きです。
スピカを断ったことはクムギへの告白なのか
第47話でイチは、スピカの申し出を断ります。この返答があると、姉を選ばなかったのだから妹が好きなのでは、と先を想像したくなります。二人の関係を楽しむうえでは、そうした可能性を考えるのも自然でしょう。
ただ、スピカへの返答をそのままクムギへの告白へ変換することはできません。ある相手の提案を断ったという事実は、別の相手への恋愛感情まで証明しないからです。クムギとの仲間関係を続けたいことと、恋人になりたいことの間には、まだ距離があります。
同じように、クムギが記録係を続けたいと言えたことも、イチへの恋心だけで説明したくありません。第47話には、デスカラス班で過ごした時間を記録することへの思いがあります。その時間にはイチがいるけれど、彼女自身の仕事の楽しさや、班への愛着も含まれるはずです。
全部を恋愛で説明すれば分かりやすいです。でも、せっかく自分の望みを口にしたクムギを、好きな男の子についていくだけの人物へ狭めるのはもったいないです。私は、イチへの親しさと、自分の仕事を続けたい気持ちが一緒にあっていいと思います。
一方で、仕事への思いがあるから恋愛の可能性を否定できるわけでもありません。親しさが別の気持ちへ変わっていくことも、そのまま大切な仲間であり続けることもあります。今の関係を好きでいることと、将来の名前を決めることは、分けて楽しみたいです。
ヒロインという読み方の強みと弱点
クムギをヒロインとして見たくなるのは、イチのすぐそばで、日々の行動や戸惑いに付き合う人物だからだと感じます。戦いの結果だけでは分からない一面を引き出してくれます。買い物のような時間があると、イチの冒険が暮らしへつながっていることも実感できます。
ただし、ヒロインという言葉には、物語を支える中心的な女性という使い方と、主人公の恋愛相手という使い方があります。前者として魅力を感じることが、そのまま後者の確定にはつながりません。ここを一緒にすると、親しい会話が全部、将来の交際を証明する材料になってしまいます。
恋愛解釈の弱点は、今あるやり取りが信頼する仲間同士でも成立する点です。相手の意思を聞く、困ったときに相談する、同じ場所で働きたいと思います。それらは恋愛を否定する材料ではないけれど、恋愛だけに固有の証拠でもありません。
もし二人の距離が変わるなら、仕事や班の都合とは離れたところで、互いと過ごす時間をどう望むかが気になります。相手にどんな気持ちでいてほしいのか、自分から何を伝えたいのか。そうした本人の選択が描かれれば、恋愛という読み方にも別の根拠が加わるかもしれません。
でも、将来の告白を待つためだけに、今の場面を前振りへ変える必要はないでしょう。街で話せることも、気持ちを聞いてもらえることも、それだけで嬉しい関係です。そこを飛ばしたくないです。
二人の関係を本人たちの言葉で見たい
クムギとイチの関係は、記録する仕事を起点に、日常の時間も共に過ごすところへ広がっています。パーティーでは、クムギ自身の希望が二人の関係に関わります。恋愛へ進むかという予想以上に、本人たちが相手へ何を望むのかを聞きたいです。


