魔男のイチ ネタバレ97話|わんわん作戦の正体とクムギの成長

魔男のイチ ネタバレ97話|わんわん作戦の正体とクムギの魔法を考察

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魔男のイチ97話「わんわん」でいちばん揺れたのは、衡との攻防ではなくデスカラスが自分の師匠っぷりを省みてしまった場面でした。そしてラストのわんわん作戦(笑)。クムギが繰り出したあの魔法の正体と、イチの何気ない一言がなぜ衡にあそこまで刺さったのか。順に見ていきます。

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97話ネタバレ|わんわん作戦が動く場面

囮役を買って出たイチとデスカラスが、衡から逃げ続ける回です。逃走ルートにあえて見通しの良い道を選んでいるあたり、追われる側なのに主導権はデスカラスが握っています。

衡の攻撃に対して切られたのが飛鼠棘(ボルトパイン)。掌がコマ枠を超えて飛び出してくる描写から入り、たった一手で封じる流れは相変わらずの対応力です。

逃げながらの会話でミナカタの名前が出たことをきっかけに、デスカラスは妙なことに気づいてしまいます。自分はイチに何ひとつ教えていない、と。師弟の関係は血の契約(師弟血判状)で結ばれているのに、指導実績はゼロだったわけですね(笑)。

そこで授けられた初めての教えが、まさかの「煽り」でした。

デスカラス側の煽りは経験に裏打ちされた戦術です。対するイチのそれは完全に天然で、魔女に習得された経験があるのかという問いを衡に投げます。これが予想以上に効いてしまい、衡は激高。逆に衡からは、気分で植物を買っては枯らす女だという煽り返しが飛び、デスカラスが魔法を飼い殺しにしているという批判が突きつけられました。

この回では、イチがデスカラスをどう思っているかも初めて描かれます。思っていた以上に信頼し、尊敬しています。最強と一緒に踊れるなら最強だ、という趣旨の言葉も今回らしい一言でした。

ラストは見開き。クムギ、ゴクラク、アマドロ、ボクスターが集結し、わんわん作戦が始まります。

クムギの成長と作戦を支える連携

デスカラスの初めての教えが「煽り」だった理由を考察

いや、ここで気づくんかい、というのが第一声でした(笑)。

ここまでデスカラスの育成方針は、実戦に放り込んで勝手に学ばせるの一点張り。試練も戦闘も、イチは基本的に現場で覚えています。だからこそ、ミナカタの名前が出た瞬間に「自分は何も教えていない」という事実が浮かび上がったのでしょう。

ただ、ここで注目したいのは、気づいた直後に彼女が選んだ教えが「煽り」だったことです。

一見するとふざけた指導に見えます。しかしデスカラスの戦い方を振り返ると、彼女は戦闘中の煽りが異様に多いです。あれは性格の問題じゃありません。相手の判断を鈍らせるための、れっきとした戦術です。つまり彼女は、自分が無意識にやってきた技術のうち、いちばん言葉にしやすいものを最初に渡しました。

教えた経験のない人間が初めて何かを渡すとき、いちばん得意なところから出るのは自然でしょう。むちゃくちゃなようでいて、デスカラスらしさは一切ブレていません。

もうひとつ、きっかけがミナカタだった点も効いています。他人の師匠と比較されるという、指導者にとって最も居心地の悪い状況を通ってから自覚が芽生えています。自発的な反省ではなく、外からの刺激で気づかされた形です。ここがデスカラスらしくて笑ってしまうところで、彼女は自分の欠点を自分で見つけるタイプではないんですよね。

さらに言えば、師弟血判状という契約が先にあって、中身が後から埋まっていく構造になっています。普通の物語なら、教えを受ける過程があって師弟になります。この作品は順番が逆。契約が先で、中身が後。形だけだった師弟が、100話を目前にしてやっと実体を持ち始めた回、という見方もできます。

イチの側も、この回で初めてデスカラスへの評価を口にしています。師匠が指導者としての自覚を持ち、弟子が師匠への信頼を明かします。両側から同時に関係が更新された回だと考えると、97話は戦闘回の皮をかぶった関係性の回だったのかもしれません。

飛鼠棘(ボルトパイン)に見るデスカラスの能力の厚み

飛鼠棘の使い方も見逃せません。

いきなり前方に衡が現れるという、普通なら詰みの状況です。そこから一手で封じています。とっさの場面で間に合う魔法だ、というのは確かでしょう。

演出面でも、掌がコマ枠を超えて飛び出す形で恐怖を提示してから、それを封じる側の手数を見せる構成になっていました。漫画でしか成立しない見せ方です。

毎回思わされるのが、デスカラスの手札の多さです。現代最強と呼ばれる根拠が、必殺技の威力ではなく引き出しの数で示されているところに、この作品の強さの定義が出ています。

魔法が意思を持つ生命体であり、習得した魔法は魔法心円で暮らしているという設定を踏まえると、手札の多さはそのまま一緒に暮らしている魔法の多さです。強さの正体が、力ではなく関係の総量になっています。ここが衡の批判と真正面からぶつかります。

衡はデスカラスを、気分で植物を買っては枯らす女だと評しました。魔法を飼い殺しにしているという意味で、かなり強烈な言い回しです。脳筋タイプの敵にしては比喩がユーモラスすぎる気もして、この作者はどのキャラにも言語センスを配るなと感心しました(笑)。

ただ、この批判が的を射ているかは別問題です。デスカラスの心円で暮らす魔法のなかには、楽しく過ごしている様子が描かれてきたものもいます。飼い殺しと呼ぶには、実態と噛み合っていない部分があります。

逃走しながら、最強と一緒に踊れれば最強だという趣旨のことを口にする場面も、この文脈で読むと意味が変わってきます。彼女にとって魔法も仲間も道具じゃありません。同じ舞台に立つ相手だという宣言でしょう、あれは。衡の批判とわざわざ並べて置いてあるぶん、どっちの魔女観を信じるかは読者が決めろ、という作りに見えます。

わんわん作戦に見るクムギの心情と成長

今回いちばん嬉しかったのがここ。ずっと待ってました。

クムギはデスカラス班の記録役として登場したキャラクターで、戦闘面で前に出る場面は多くありませんでした。自分の不甲斐なさを抱えている描写も積み重なっています。

そのクムギが、今回は作戦の指揮を執っています。しかも投入されたのが犬型の魔法で、嗅覚によって魔法石を探すという、戦闘力とは別軸の解決策です。一体ずつ見た目が微妙に違うところを見ると、複数体を同時に運用できる性質の魔法なのかもしれません。

ここで効いてくるのが、彼女の役割が記録だったことです。記録とは情報を扱う仕事で、探索も本質的には情報を取りに行く行為です。つまり今回の配置は、まったく畑違いの成長ではなく、もともとの適性の延長線上にあります。だから唐突に見えません。

布陣の組み方も面白いところです。ゴクラク、アマドロ、ボクスターが揃うなかで指揮を執っているのがクムギで、囮に出たイチとデスカラスが敵の注意を引きつけている間に、別動隊が目的を進める形になっています。スケ丸が捕まったままなのも、この構図を維持するための配置なのでしょう。

彼女がこの作戦に踏み切れた理由を、心情の面から考えると腑に落ちます。これまでのクムギは、自分が班の役に立てていないことを気にしている描写が積み重なってきました。今回の気合いの入り方は、その蓄積に対する回答に見えます。デスカラスへの信頼を前提に動いている点も、97話で描かれたイチの信頼と重なっていて、班全体が同じ方向を向いた回だったと言えそうです。

戦闘力の高さをそのまま強さとして描かない作品なので、クムギの回し方はその方針の象徴とも言えます。わんわん作戦という間の抜けたネーミングと、ラスト見開きの華やかさのギャップも含めて、この回のご褒美パートでした(笑)。犬たちの見た目が一体ずつ違うので、この先で個体ごとに役割が振られる展開もありそうです。

イチの一言が衡に刺さった論理の穴を考察

さて、ここからが本題。

イチが投げた問いは、要するに「お前は魔女に習得された経験があるのか」というものでした。これが衡に刺さって激高を招いています。

でも、冷静に考えるとおかしくないですか? だってこれ、褒め言葉になりかねないんですよ。

この世界の習得とは、魔法が課す試練を人間が乗り越えることです。裏を返せば、習得されていない魔法は「まだ誰にも試練を破られていない魔法」。強さの指標で見たら、習得された経験がないほうがむしろ格上じゃないですか。煽りとして成立しません。

にもかかわらず衡は激高しました。ここには二つの読み方があると思います。

ひとつは、衡が過去に習得された経験を持っていて、その記憶に触れられたという読み。魔女への嫌悪が常軌を逸している点を踏まえると、単なる思想ではなく実体験に根ざしている可能性はあります。

もうひとつは、逆に一度も習得されたことがなく、魔女に習得された魔法たちの声が聞こえるという主張の根拠が、実は伝聞でしかなかったという読み。この場合、イチの問いは衡の主張の土台そのものを崩したことになります。デスカラスの煽りが感情を狙ったのに対し、イチの問いは論拠を狙って刺さった、という構図です。

個人的には後者を推したいところです。というのも、衡の主張は魔女に習得された魔法たちが悲痛な声をあげているというものですが、デスカラスの心円には楽しそうに過ごしている魔法も描かれてきました。全員が苦しんでいるわけではない以上、声が聞こえるという前提そのものに無理があります。イチの問いは、そこを狙わずに射抜いてしまったわけです。

もっとも、衡が本当に習得された経験を持っていたなら、話はもっと重くなります。かつて自分を習得した魔女との関係、あるいは仲の良かった魔法が狩られた過去。どちらであっても、あの嫌悪の激しさには説明がつきます。

どっちにしろ、衡の魔女嫌悪には本人の体験が絡んでいます。この回で見せられたのは嫌悪の強さだけで、出どころは伏せたまま。

しかし天然の一言が相手のいちばん脆いところを正確に踏み抜くって、えぐくないですか(笑)。悪気がないぶん始末に負えません。デスカラスが煽りの才能を認めたのも、口が悪いからじゃなく、急所を無自覚に嗅ぎ当てるこの鼻を買ったからでしょう。

そう考えると、この回でイチが使った犬のような嗅覚と、ラストで発動したわんわん作戦の探索が、同じ回に並んでいるのは偶然ではない気もします。

わんわん作戦で変わった仲間の役割

97話は、逃走戦の緊張感の裏で師弟関係が一段進んだ回でした。デスカラスが指導者としての自覚を持ち、イチはデスカラスへの信頼を口にします。形式だけだった師弟血判状に、ようやく中身が入り始めています。

クムギ指揮によるわんわん作戦の発動で、魔法石探索も本格的に動き出しました。犬たちが最初の石にたどり着くのか、それとも衡に嗅ぎつけられるのか。

そして今回の煽り合戦で開いた穴から、衡の過去がどこまで引きずり出されるのか。次回はそこが見どころになりそうです。

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