この記事は『ひぐらしのなく頃に』のネタバレを含みます。
鷹野三四が惨劇を起こす側へ進んだのは、自分を救った高野一二三の研究を認めさせ、その名を残すことに執着したからです。祭囃し編では、幼い美代子が救われた過去と、その研究を失いかけた鷹野の焦りがつながります。
高野一二三は美代子を救った家族
鷹野の幼いころの名は田無美代子です。両親を失ったあと、施設で虐待を受けた美代子は、高野一二三に助けを求め、そこから救い出されます。
一二三との出会いで、美代子には安心して暮らせる場所ができました。祖父の研究を大切にする出発点には、功名心より先に、自分を助けてくれた人への思いがあります。
だから一二三の研究を否定されることが、鷹野には単なる学問上の評価で済まなかったのだと思います。研究が正しかったと認めさせることに、祖父への恩返しまで重ねてしまったのでしょう。
研究を継ぐことが目的のすべてになる
鷹野は一二三の研究を引き継ぎ、入江機関で雛見沢症候群を追います。看護婦や伝承好きという顔の裏で、「東京」に所属し、山狗を従える立場にありました。
祖父の研究を認めさせたいという願いだけなら、村人を犠牲にする必要はありません。それが変わってしまうのは、研究の継続や名誉の回復を、ほかの人の命より優先したときです。
鷹野は、人が苦しんでいるから治療を進めたい入江とは、研究に求めるものが違います。成果が人を救うかより、祖父の正しさを認めさせられるかが先に来ます。このずれが、同じ機関にいながら二人の選ぶ道を分けています。
打ち切りの危機に野村の誘いが重なる
支援者の小泉が亡くなると、鷹野の研究は後ろ盾を失い、打ち切りへ向かいます。祖父の名誉を回復する機会まで失うと受け止めた鷹野に、野村が終末作戦の実行を持ちかけました。
鷹野には研究を世に認めさせたい目的があり、野村側には「東京」内部の勢力争いがあります。同じ作戦を進めていても、祖父の研究を大切にしてくれる協力者同士ではありません。研究への執着が、政治的な目的に利用されているのです。
それでも、梨花を殺して作戦を起こそうとするのは鷹野自身です。利用された事情があっても、選んだ行動までなくなるわけではありません。ここが、過去を知って気の毒だと思いながらも、簡単には同情しきれないところです。
「神になる」は忘れられたくない願い
鷹野の目指す「神」は、目の前の人を救う存在というより、名を残し、忘れられない存在として読むとしっくりきます。祖父の研究を誰も否定できない形で世に刻むことが、自分の生きた意味にもなっているのでしょう。
でも、祖父に救われた思い出を守るために、梨花たちの暮らしを壊してしまいます。美代子に必要だったはずの救いを、ほかの子どもから奪う側に回っているのが痛いです。
祭囃し編が鷹野の幼少期から描くことで、黒幕の顔は大きく変わります。最初から人を殺すことだけを望んでいた人物ではなく、救われた経験への執着が、救いを求めるほかの人を見えなくした人物だと感じます。
富竹が差し伸べる手の意味
計画が崩れた鷹野に、最後に手を差し伸べるのが富竹です。研究を成功させた鷹野だけに価値がある、という関係ではありません。
祖父の研究を証明できなくても、鷹野本人を見ている相手がいます。あの結末が響くのは、幼い美代子を一二三が救ったところと重なるからだと思います。
罪が消えたというより、研究と自分の価値を結びつけ続けた鷹野に、別の生き方が差し出された場面です。ここで処刑して終わらないところに、『ひぐらし』らしさがあります。
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