この記事は『ひぐらしのなく頃に』のネタバレを含みます。
鷹野のスクラップ帳の寄生虫説は、雛見沢症候群の存在という点では真相に近い説明です。ただし、体からうじ虫が湧く話や、オヤシロさまの信奉者が病気をばらまくというレナの推理まで正しいわけではありません。
スクラップ帳のどこが真相に近いのか
アニメの罪滅し編で示される帳面の説明は、雛見沢の「鬼」を寄生虫による病気と結びつけ、オヤシロさまを治療者のような存在とみなすものです。鬼の祟りに見える異変を、病気として説明しようとしています。
このうち、村に固有の病気があり、発症者の認識や行動に影響するという方向は、解答編で分かる雛見沢症候群に重なります。しかし、それだけでオヤシロさまの正体や古い伝承の成り立ちまで証明されたことにはなりません。
帳面の寄生虫説、そこからレナが組み立てた犯人像、解答編で明かされる研究機関の実態は分けて読む必要があります。帳面を「全部嘘」と片付けるのも、真相をそのまま書いた資料と読むのも、どちらも行き過ぎです。
レナが信じたのは「うじ虫」の一致
レナには、茨城にいた頃に身体からうじ虫が出ると感じた経験があります。鷹野の帳面にも、雛見沢を離れた者がうじ虫に食われるという伝承がありました。
自分に起きた不可解なことが、別の人の資料に書かれています。それを見たレナが、理由が分かったと思うのは理解できます。周囲に分かってもらえなかった体験を説明してくれるものが、突然現れたわけです。
ただし、レナがうじ虫を見たことは、実際に身体から虫が出たこととは同じではありません。星海社のコラムは、この体験を幻覚・幻触として説明しています。帳面との一致で確認できるのは体験と記述の近さであって、虫の実在ではないのです。
信奉者が寄生虫をばらまくという推理は誤り
レナは鷹野の死を聞き、オヤシロさまの信奉者が口封じをしたのではないか、さらに寄生虫をばらまいて病気を復活させるのではないかと疑います。これは帳面を読んだレナの推理であり、作中の確定した事件説明ではありません。
解答編で分かるのは、鷹野自身が山狗を使って惨劇を起こす側だったことです。秘密を知った鷹野が信奉者に消された、という前提から違っています。村に陰謀があるという方向は近くても、加害者と被害者の捉え方が逆なのです。
全部でたらめなら話が早かったんですよね。近い部分があるから、違う部分まで信用してしまいます。スクラップ帳の厄介さは、レナにとって納得できる材料が入っていたことだと思います。
帳面はレナの疑いを一つの物語にした
レナは家庭の問題だけでなく、富竹と鷹野の死を聞かされ、周囲の動きにも不安を抱きます。そこへ帳面の説明を当てはめると、ばらばらの不審な出来事が、大きな陰謀としてつながってしまいます。
すると、仲間が止めに入っても安心できません。レナの見ている危機を仲間は理解していないか、もう信用できない側にいることになるからです。理解してくれる人が減るほど、自分だけで動かなければという焦りが強くなります。
この帳面は、レナの疑いを最初から全部作り出したというより、すでに抱えていた不安へ説明を与えたのだと読めます。自分の体験に合うから信じ、信じた説明で次の出来事を見ます。その流れの中で、学校への立てこもりにまで進んでしまいました。
鷹野が書いたから正しい、とはならない
鷹野は後に、入江機関や研究に関わる人物だと分かります。だからといって、彼女が集めた民俗資料を、そのまま病気の診断書や事件の報告書として読むことはできません。
とくにレナが触れているのは、村の伝承を材料にしたスクラップ帳です。書き手が秘密を知っていることと、読者へ真相を正確に渡すことは違います。
罪滅し編の時点ではレナと一緒に「これで説明がついた」と思い、解答編の後には「近いけれど、その結論ではない」と気づきます。スクラップ帳は、真相への距離を縮めながら、レナの判断を危うくする資料だったのでしょう。
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